はじめに

東洋医学〜小児ばり〜

 アトピー性皮膚炎・小児喘息・夜鳴き・アレルギーなどは、子供がよくかかる病気です。
東洋医学では、健康は生まれる前から大切に考えられていますが、生まれたあとの生活、つまり、食事・睡眠や社会環境は、特に影響が強く与えられると考えます。
母乳で育てられている子供は、生後半年間は母児免疫があるので「はしか」や「ほうそう」にはかかりずらいですが、上記の症状や「かぜ」などは、生後まもなく発症するお子さんが少なくありません。

 私たちは、このような体調の変化の根底にあるものは身体の「冷え」と考えています。
薄着をしたり寒いところに長時間いるといったことのほか、遅い時間(夜8時以降)や朝の入浴なども冷えの一因と考えます。
 また授乳期では母親が常時冷たいものを飲んだり食べたりしていると母乳が冷たくなり、赤ん坊は食事のたびに身体を冷やしていることになります。
  アレルギーや湿疹、アトピー性皮膚炎などのお子さんの母親が冷え性であることが多々あります。

 少し大きくなると間食をするようになりますが、白砂糖も身体を冷やす要因になります。 また発育の満たないお子さんに薬を多く飲ませたり、塗ったりすることは、身体の中で熱を作ることを制限し、結果 的には冷えへとつながると東洋医学では考えます。
アトピーや喘息、アレルギーや湿疹のあるお子さんは手足が冷たかったり、便秘の場合が多いようです。
冷えは内臓、特に腸の発育の妨げになるからです。

 東洋医学は、このような生活による身体のわずかな不調を敏感に察知し、「内臓のバランスのくずれ」を調整する学問です。
 そして、小さなお子さんにも(小さなお子さんだからこそ)小児ばりは健全な身体づくりにとても有効な方法と考えています。

■1.流行性耳下腺炎・顎下腺炎
■2.アトピー性皮膚炎
■3.小児喘息
■4.突発性湿疹
■5.中耳炎
■6.アレルギー
■7.夜泣き
■8.夜尿症
■9.便秘
■10.下痢
■11.冷え性
■12.発熱
■13.腹痛


1.流行性耳下腺炎・顎下腺炎

 子供の頃によくかかる病気です。
おたふくかぜ」といったほうが誰でもわかるのではないでしょうか?
 おたふくかぜは、耳の下にある唾液を出す場所(腺)・耳下腺に、ウイルスが入り込みそこが大きく腫れる様がおたふくさんに似ているためにつけられた俗称です。
唾液を出す場所(腺)は他に顎の下の顎下腺、舌の下に舌下腺がありますが、人によっては顎下腺が腫れます。最初に顎下腺が腫れるとおたふくかぜに見えないこともありますので注意が必要です。

 おたふくかぜは16日から18日の潜伏期間の後に発病します。
ただし、ウイルスに感染しても30〜40%は何の症状も示さず抗体ができて終わることもある感染力の弱い感染症ですから怖がることはありません。

具体的な症状は、
(1)耳下腺・顎下腺が腫れる。
(2)腫れた部分が痛む。
(3)熱が出る。
(4)お腹が痛くなる。

などです。
  3〜7日で腫れがひきます。両側の耳下腺が腫れる人は片側が腫れ数日後にもう一方が腫れてきますので、腫れがひくのに10日ぐらいかかることもあります。片側だけ腫れる人が約25%で、両側が腫れる人が約75%です。

  体力が低下していると無菌性髄膜炎になることがあります。耳下腺が腫れた1〜5日目のあいだに高熱・頭痛・嘔吐などが起こります。重症の場合は意識がはっきりしなくなったり、けいれんを起こしたりしますが、そんなにひどくなるのはとてもまれです。熱が39度を超えた状態が続くとまれに難聴や脳波異常などの後遺症を残すことがあります。

 治療についてですが、おたふくかぜウイルスに効果 的な薬はありません。
西洋医学の処置法として、耳下腺が長期間にわたり腫れていると壊死することがありますので抗炎症剤の服用を勧める医師がおります。また、無菌性髄膜炎を合併を考慮し抗菌剤の服用を勧める医師もいます。
  基本的には安静を保ち腫れがひくのを待ちます。

  体力がある場合は上記日数程度で緩解しますが、基礎体力が低下していると耳下腺の腫れがひくのに1週間以上要したり、体熱の上昇がつづきます。両側が腫れると2週間以上苦しい思いをすることになります。こんなときは鍼灸治療を受けてみてください。腫れが早くひき体温の上昇を防ぐお手伝いができます。

 個人的な見解ですが、体温が37度台の時は体力が勝っていますが、38度を越える時は病気に押されてきているといえます。鍼灸治療を是非検討してみてください。
  通院が可能な体力があるときに治療を開始することが肝要です。治療対象年齢は生後3週間を経過していたら大丈夫です。
 理想的なのは、耳下腺に痛みやわずかな腫れを感じたときにすぐに鍼灸治療を開始する事です。基礎体力の状況によっては熱の上昇や耳下腺がはれ上がることを防ぐお手伝いができます。

 おたふくかぜは、 気がつかないうちに抗体ができている人が多いのですが、10歳を過ぎて思春期・成人期にまれに発病する人がいます。基本的に体力が低下しているときが多く、症状が悪化すると特に男性は大変です。20〜30%の人が睾丸炎を起こすからです。睾丸炎になると睾丸は腫れあがります。2個腫れることは少ないのですが、1個でもとても痛くつらい症状です。睾丸炎はおたふくかぜ発症後1週間以内に起こるのが通 常ですが、時には3週間以上経過してから発症することもあります。また、睾丸炎のほか発熱・寒気・嘔吐などの症状を伴います。まれに後遺症として男性不妊勃起障害になることがありますので安静を保つだけで症状が消えることを期待するのは得策ではありません。人によっては、膵臓炎を合併することがあります。
  成人してからおたふくかぜが発症した人や男性はすぐに鍼灸治療をすることを考えてみてください。

  西洋医学と東洋医学を患者さんの状態によってうまく使い分ける医療・統合医療がいま世界では主流です。 医療法により西洋医学の医療機関内で東洋医学の医療を受けられない今の日本は世界から取り残されていますが、一人一人が高い見識を持つことで今の状況を解消できるはずです。東洋医学を有効にご活用ください。

メニューへ






2.アトピー性皮膚炎

〈健康研究サークル「オアシス」で行っている活動の一つ、「オアシスの集い」で行った講演会をもとに作成した資料です。お読みになり、ご意見・ご質問がおありの方はメールをどうぞ。講演会は定期的に行っています。ご希望の方は電話でお申し出ください。詳しくは、健康研究サークル「オアシス」のコーナーをご参照ください。〉 
目次

 
 

A.西洋医学の見地から


1.アトピー性皮膚炎は病名でなく、症候名です

 「アトピー性皮膚炎」に対して、最初に西洋医学的な見地から話を進めていきます。西洋医学では、「病名診断」に従い治療方法を決めています。「あなたは何々病ですよ」と言われるということは、どこが悪いかはっきりと分かっているということです。
 仮に病院に行き、検査をして、どこが悪いか良く分からないとします。でも、せっかく病院に来たから、病名をつけなければいけない、と医師は頭を悩ませます。そんな先生たちのため?に、「病名」に変わるものとして「症候名」を用いることがいつの頃かはじまりました。症状がたくさん集まったものに名前をつけたものが「症候名」です。「症候名」というのは「病名」ではありませんので、どこが悪いか分かっていないことを意味します。
  「症候名」をつけられた患者さんは、医師が「病気の原因が良く分からない」といっているのだと理解しなければいけません。「あなたは、「病名」がつけられる前の段階ですよ。でも何か「病名」らしきものをつけないと納得して帰ってくれないだろうな」と医師が思い「症候名」を伝える場合があるようです。また患者も「病名」「症候名」をつけてもらうと納得して帰れるという方も多いのが事実のようです。「病名」がつけられない方に「症候名」をつけるという実態は蔓延しているように思います。
 「アトピー性皮膚炎」という言葉は、西洋医学者が用いている言葉です。でも、この言葉は「病名」ではありません。「アトピー性皮膚炎」は「症候名」です。西洋医学では、確実な分析がされていません。よく分かっていないということは治療方法がないということです。このホームページをお読みになっている方は、そのことがよ〜くお分かりになっているから、ここにたどり着いているのだろうと私は理解しています。
 「アトピー」という言葉は、紀元前3〜4世紀頃に「APOTOS」というギリシャ語が語源とされています。実際に使われるようになったのは19世紀末です。フランスの皮膚科でペニエという医師が文献上紹介しています。1923年アメリカのクック氏とコカ氏が「アトピー」の概念を提唱して、1933年アメリカのザルツバーガー氏らが「アトピー性皮膚炎」と命名しました。現在2003年ですから、約70年前のことになります。比較的新しい名称であることがご理解いただけると思います。  「アトピー」という言葉は日本語に訳すと「奇妙な」「とらえどころのない」「不思議な」「分類する場所がない」という意味です。なんとなく不確実な意味合いで訳されています。「アトピー」という言葉は「症候名」に用いられていますので、確実な言葉のように感じている人が多いと思いますが、実は全く不確実な言葉なのです。これは、西洋医学で同じく不確実な意味を表す「アレルギー」と同じ分類に入れられています。「アトピー性皮膚炎」とは、「遺伝や体質が深く関係している奇妙な病気」ということをまず理解していただきたいということです。また、「アトピー性皮膚炎」は、しっかりした「病名」や「症候名」ですらないということを認識していただきたいと思います。

2.アレルギーって何?

 さて、さきほど「アトピー性皮膚炎」は「アレルギー」と同じ分類に入れられているとお話しました。「アレルギー」という言葉は、「嫌いな人といるとアレルギーが出てしまう」という日常的な日本語にまでなっています。でも、「アレルギー」の語源を知っている人はほとんどいないだろうと思います。
 アレルギーとは「変わった働き」「変わってしまった反応」という意味です。医学的には「抗原抗体反応」といいます。「抗原抗体反応」とは見知らぬ物体が体外から入ってくるとそれを跳ね除けようとする仕組みのことをいいます。身体には穴がいっぱい開いています。鼻、耳、口、お尻などの大きな穴、皮膚の毛穴や汗腺を入れると無数です。その穴からいっぱいいろんなものが入ってきます。目には見えませんが、いたるところに細菌・ウイルス・リケッチアなどが、うようよしています。ものを食べても入ってきます。魚でも肉でも細菌等が沢山寄生しています。それを食べれば体の中にいろんなものが入ってきます。「抗原抗体反応」とは、そのような異物を身体が跳ね除けようとする仕組みのことをいっている訳です。
 身体に入ってきたときに作り出されるたんぱく質のことを「抗体」といっています。「抗体」を作る原因になるものが「抗原」です。アレルギーを起こす原因になるものは衛生学上ではダニ、家ごみなどがあります。最近テレビでは、「こういうものが原因でそれから逃げるにはどうしたらいいのか」という内容のものばかりを取り上げていますが、そのような方法は根本解決になりませんので、ここでは取り上げないこととし、話を進めます。

メニューへ

3.根本解決にならない西洋医学の「アトピー性皮膚炎」への対処

 「アトピー性皮膚炎」は、医学上、増悪・緩解を繰り返す〈かゆみ〉のある湿疹を主とした疾患に用います。よく、患者さんから、皮膚科を受診すると、医師が「この状態はアトピー性皮膚炎ですね」と診断?し、それ以外の話をほとんどしない、という話を耳にします。
 「アトピー性皮膚炎」は治療法が分からない「症候名」ですから、西洋医療では、対応の手順として、
  1.アトピー性皮膚炎を引き起こしている原因を見つける
  2.肌の手入れをする 
  3.薬物療法を行う(症状をおさえる) 

 で対応しています。根本解決になる医療行為がないことがお分かりだと思います。

 近年、子供以外に成人の方も増えています。大きな要因として、生活様式の変化がもたらしているといえます。食べ物・汗・ストレスなどが原因としてあげられることが多いようですが、これらを避けることは現代社会において無理だと思われます。また、肌の手入れを入浴に求め、汗や皮脂・汚れを洗い流し、水分を補給することに傾倒すると、洗いすぎて脂っ気が無くなり、むしろアトピー性皮膚炎を悪化させている例が多いように思われます。最近、石鹸の問題が取り上げられています。合成剤を使った石鹸が主流ですが、自然の材料だけでつくられた石鹸は値段が高いですよね。昔は当たり前だった自然の石鹸を使用するためにお金をかけることにつながります。「アトピー性皮膚炎」の患者さんをお持ちのご家族はこういった知識はお話しするまでもなく、たくさん知っていらっしゃる方が多いようです。
 医師の生活指導は、この食べ物はいけない、これはしてはいけない、あれはしてはいけないといわれ、それだけで精神的ストレスになるようなことばかりだという話を聞きます。でも、生活を神経質なまでに注意しても、なかなかアトピー性皮膚炎が良くならない。良くないから、仕方なくステロイド外用薬を使用する。という話を良く聞きませんか?とくに、親がアトピー性の皮膚状態になっている人は、お子さんの生活が、どこに問題あるのか分からないと思います。
 毎晩お布団に入ると皮膚をかきむしる「アトピー性皮膚炎」の子供に、ステロイド外用薬を使ったら、夜すっと眠ってくれた。親もほっと一安心。明くる日、また痒みがでてきた。んんんーー どうしたら良いのだろう。このままステロイドを続けても良いのだろうか?
 
 西洋医学は、症状が出たとき、症状を回避するためや、症状を押さえ込むにはどうしたら良いか、またこの苦痛から逃れるにはどうしたら良いかということを中心に医療を行っています。患者の苦痛を取り除くということは、十分医療行為として重要なことと思います。でも根治は困難です。現時点では、「アトピー性皮膚炎」に関して、西洋の医療で根治する方法がみあたりません。まず症状を押さえ込む事を重要視しているように思われます。
 このままステロイドを続けても良いのだろうか?とお悩みの親御さんなら「ステロイド外用薬を、塗っていると症状は出ませんが、このまま継続しても問題ありませんか」と医師に尋ねてみたことがあるのではないでしょうか?おそらく明確な返答をしなかった医師に診療してもらっていた方が、この文章を読んでいることと思います。


メニューへ




4.「症状」とは、身体がもとに戻ろうとする現象



 ここで、発想を変えてみてください。身体が丈夫であれば日常生活をそれほど神経質にしなくても問題はありません。身体は、疲れてきて具合が悪くなると病気の方向に向かいます。ある一定の方向まで向かうと、必ず身体がもとの状態に戻ろうとします。生命体は、そういう力を持っています。
 身体がもとに戻ろうとするときに出てくる現象が「症状」です。症状は身体が良くなろうとしている現象です。飲酒を止めると禁断症状が出てくる。それは飲みたいからですけれども、本当は肝臓が回復しようとしている現象です。ずうっと起きていると身体が疲れてきます。疲れると眠くなります。そんなときは、身体が疲れてきたから寝させてあげなければいけません。肉体が「寝させてくれ」と訴えている現象です。問題なのは症状が出てくる生活をしているということです。
 症状が何も無い生活を送ることが一番良いと考えられます。もし、症状が出ないで死ぬことがあれば、相当悪いことを意味します。症状が出ても無視すると悪化します。悪くなった状態でいったん痛みが治まることがあります。同じ生活を続けていると、しばらくしてまた症状が出ます。再び症状を無視すると、そのうちその状態に慣れます。そして、悪化します。慢性化をたどり気が付くと症状が出なくなります。この状態がとても怖い状態です。
 老人性の肺炎は呼吸困難になりません。レントゲンを撮影したら、余命2、3日です、と言われたりします。病気をすると、まず高熱が出ます。高熱が出た人は良くなります。抵抗力旺盛な証拠だからです。でも、悪くなっていると思われるのに高熱が出ない人は先行き不安です。
 ですから、見方を変えると症状が出るということは非常に良いことです。痒みが出たとき、「この子はどうして痒みが出たのだろう」と考えてあげなくてはいけません。「昨日どんな生活をしたのだろうか?今日どういう生活をしたのかしら?」。自分に置き換えて考えても良いです。仮に、今腰が痛いとします。どうしてだろう?昨日何時間寝たのか?と考えてあげることが重要です。
 ところが、腰が痛い=痛み止め飲まなくてはいけない、湿布しなくてはけない、という対応する方がとても多いようです。症状を消すためには、休みなさい、眠りなさい、です。話を聞く耳が痛いですか?難しく考えないでください。薬を飲む前にまず自分の生活を振り返れば良いだけです。対応策が必ず見えてくるはずです。(考えてもわからない人は、当院のHPの「くらしと養生」のコーナーを参考にするか、診察にいらっしゃってください。少し一緒にお話しすると、すぐ対応策が見つかりますよ)




B.東洋医学の見地から

1.「アトピー性皮膚炎」になる原因は「冷え」


 今度は東洋医学的な見方で考えていきたいと思います。「アトピー性皮膚炎」の発症原因は身体の「冷え」です。この一言に尽きます。医師たちが東洋医学を勉強する学会の一つに、「日本東洋医学会」という学会があります。そこでの、「アトピー性皮膚炎」に対する共通の認識も、「冷え」です。東洋医学的な考え方を医師たちが理解すると、内科医も皮膚科医も、原因となる身体の「冷え」をどう取り除こうかと論議します。少ない人数ですが、こういった医師の診療を受けるとアトピー性皮膚炎も良い状態になると思います。残念ながら、東洋医学をよく理解した皮膚科の医師は、まだまだ少ないのが現状です。
 身体が冷えてくると内臓の働きは悪くなります。3歳のお子さんが「アトピー性皮膚炎」を引き起こす生活を改善せず10歳を迎えても、内臓は健康な10歳児のように成長しないことが考えられます。そういうお子さんは、内臓が6・7歳程度の能力しかないような印象を持つことがよくあります。中学、高校と、年月を経れば経るほど、どんどん成長が遅れるように思います。
メニューへ

2.「冷え」の主な6つの原因


 では、いったいどういう生活をすれば、身体が冷える状態になると思いますか? 

 まず、第1に寝不足することがいけません。5時間未満は要注意です。医学的に何時間眠らなければ病気になるというデータは残念ながらまだ出ていませんが、5時間以下の睡眠は生理学的に細胞異常が出るという論文が出ています。
 個人的な意見ですが、毎日の臨床を通じ、大人は8時間、中高生は9時間、小学生は10時間、乳幼児は12時間眠ると内臓の成長が良いという印象を持っています。
 昔から「寝る子は育つ」といいます。なぜ、眠ることがいいのだと思いますか?眠ると内臓の疲労が回復すると考えられます。具体的にいうと、眠っている間に背骨で赤血球を作ります。扁桃腺で白血球を作ります。立っていると骨格を支えることに労力が取られ、ほとんど血を造りません。横になることで、重力の負荷がなくなり、細胞が再生されます。これは1990年代になって分かってきた理論です。ですから、寝ないといけない

 たとえば、白血球についてのお話をしましょう。一日の間に白血球は、細菌やいろんな異物を食べ、自分の身体を外的から守っています。そのため、夜になると1平方ミリメートルに6000〜8000個あるものが減ってきます。夜は抵抗力が落ちています。疲れすぎているとき、酒を飲み、甘いものを沢山食べると、扁桃腺のある場所・喉やお腹が痛くなることがあります。思い当たりませんか?白血球は、寝ることによって再生されることがわかっています。
 寝不足が続くと白血球が減り、抵抗力・免疫力が落ち、すぐにアレルギー(抗原抗体反応)がでてきます。1,2日の寝不足は良いですが、慢性的な寝不足はいけません。アトピー性皮膚炎になるお子さんは大人と同じ生活を強いられていることが多いです。
 親は、自分たちと同じように6〜8時間の睡眠で良いだろうとか、親が夜中の2〜3時に帰宅したにもかかわらず起きてはしゃぐ子供と一緒にビデオを観るとか、夜の10〜12時にファミリーレストランで食事を摂る親子、夜居酒屋で一緒に食事をしている家庭も少なくありません。「アトピー性皮膚炎」で来院するお子さんのご家庭では、夜遅くまで起きているお子さんがとても多く見られます。最近は、そのことを疑問視すらしない親が多くなってきた印象があります。現代社会では、やむをえずそのような生活をしていることが多いようですので、今挙げた例を批判的に捉えてほしくはないのですが、私が申し上げたいのは、子供の立場に立って考えてみてくださいということです。
 寝不足や、夜型の生活をしていますと、大人の方でも体調を崩しやすくなります。体調を崩すと、熱を作り出す力が弱くなり、体温が下がります。自分は、「冷え」やすい体質だと思い込む時期です。痒みや湿疹が出てき始めます。そして、この状態が長期化すると、「アトピー性皮膚炎」といわれます。
 乳幼児は、37度台が普通の体温ですが、測ってみると36度台になっています。36度台だから大人と同じで正常だと思っている親が結構多いようですが、この認識は改めていただきたいところです。小学生になって36.8度くらいになります。小学校高学年から中学生になるに従い、36.5度程度に少しずつ下がります。高校生になると大人と同程度になり、成人を過ぎると36.2〜3度くらいになります。
 「大人の体力が備わる18歳ごろまでは、寝不足をしないほうが良い」と認識すべきだと私は考えています。

 第2に、遅い時間の入浴はいけないと考えます。特に夜0時以降は要注意です。入浴は夕方はいるのが一番良いと思います。日中陽があるときに入浴すると風呂上りに体熱が奪われづらいからです。
 また、食事直後に入浴するのはあまり良くありません。内蔵を強く傷めます。しかし、帰宅時間の遅い方は、食事を優先させたい方が多いことと思います。食事と入浴の時間がどうしても逆転せざるを得ない方は、食後1時間空けて入浴されるのが良いでしょう。


 第3の原因として、遅い時間帯の飲食が考えられます。夜8時以降の飲食は内臓の働きを損ねます。特に夜10時以降の飲食は、身体の働きを確実に悪くします。具体的な例として、膵臓への負担をあげてみましょう。夜8時頃をピークにその前後30分の間、膵臓からインシュリンという物質が沢山出ます。インシュリンは血糖値を下げる物質です。夕食が6〜7時に食べ終わり、食べ物が消化され栄養分が血液中に入り始めます。このことは、血糖値の上昇を意味します。膵臓は自発的に血糖値をコントロールするために、インシュリンという物質を血液中に放出して、正常な状態に戻します。実にうまく出来ている生命の神秘です。
 しかし、現代社会人は、夕方に食事している人は少ないと考えられます。夜8時以降、いわゆる夜食をしています。この時間帯を過ぎてから、食べますとどんどん血糖値が上がります。そのため、一仕事終わったはずの膵臓は血糖値を下げるため、インシュリンを作り出すという労働をし続けます。9、10、11時と、残業していることになります。5年、10年と同じ生活をしていますと徐々に膵臓の働きが低下し、やがて「糖尿病」という病名がつけられます。近年、糖尿病は国民の800〜1000万人ともいわれます。7時くらいまでに食べ終わるのが内臓にはやさしい、ということがご理解いただけるでしょうか。
 話を「冷え」にもどしますと、夜遅く食事をすることにより、内臓が疲労し、体温を維持する機能が衰えるということにつながることを知っておいていただきたいのです。体温を維持するということは身体にとって、一生休むことの出来ない大イベントです。内臓を働かせ過ぎないように注意することが健康の秘訣です。


 4番目にあげられるのが、不規則な時間帯の飲食。夜遅い時間帯に食事すること以上にダメージを受けます。遅いなりに規則正しいと、まだからだが持ちますが、いつ仕事させられるかわからない状態を続けた際にからだが受ける疲労は計り知れません。今こんな生活をしている人が多いですよね。新聞記者や、外回りのサラリーマンなど、職業を上げたらきりがありません。大変な世の中です。


  5番目として、口呼吸のお話をしましょう。口呼吸は、体温を下げます。鼻から吸った空気は、鼻にある副鼻腔という場所を通ると、体温より低い空気を一瞬にして同じ温度まで引き上げてくれます。冷たい空気を長時間吸いすぎると、この副鼻腔というところが、疲れて熱をもち(炎症状態)膿がたまり、鼻が詰まります。そのため、口呼吸になります。口から呼吸すると、口の中には体温を上昇させる機能がありませんので、冷たい空気がそのまま体内に入ります。肺が冷え、血液が冷やされ、やや温度の下がった血液が全身をめぐるため、体温が下がるわけです。 外から身体を冷やしても同じです。冷えが、体の中に入り込んでくると、その冷えに対抗するため体内に熱が生じます。その熱は体外には出ないで体内にこもります。こもった熱が鼻にあると膿が溜まります。鼻に膿が溜まると通り道を塞いで結果的に口で呼吸をします。体を冷やすことにつながるわけです。
 一番冷えた状態は分かりますか?それは死んだ状態です。つまり、体を動かせない状態を意味します。逆に体を動かせる状態は健康な状態です。
 運動は、骨格の筋肉を丈夫にして、熱をつくります。暖かい食べ物を食べ、洋服を着て暖房の前で温まっていても、動かないでいると体は冷えてきます。運動をしなければ熱はつくれません。筋肉が細いとあまり熱はつくられません。筋肉を太くするためには運動が必要です。ですから、熱をたくさんつくるためには運動が必要です。
 基礎体力を維持するためにどのくらいの運動が必要かということに付いての個人的見解ですが、10代は週6〜7日、20代は週に5〜6日、30代は週に3日、40〜50代は週に2日、60代以上は週に1日もしくは短い時間で週2日が適当と考えています。

 最後に、ストレスについてお話します。精神的ストレスは、瞬間的な場合はあまり問題が生じませんが、ずっと24時間持続的にストレスを受けていたら病気になります。3日以上続けたら発狂するそうです。ナチスドイツがユダヤ人に行った人体実験でわかったことですが・・・。ものすごいストレスを受け、翌日起きたら全部白髪になってしまうというのもストレスです。
 でも、大人はストレスを解消する方法を自然に知っています。たとえば、皆さんは炭酸ガスを体内に入れるということでストレスを解消しています。タバコを吸ったり、ビールや炭酸飲料を飲んだりするとストレスで緊張していた交感神経の働きが弱まり、逆に副交感神経の働きが優位なります。そうするとリラックスします。だから、みんなビールを飲みたがります。最初の一杯目が美味しいのは体内でそういう現象が起きているからなのです。最近、炭酸飲料を飲む子供が増えています。その結果、肥満も増えています。今のお子さんはストレスが多いのでしょうか?
 子供がストレスを受けるとすれば、学校でいじめに遭う、シカトされる。それにより体の調子が崩れてくると何か変わった状態、「アレルギー」という状態が出現します。皮膚に出ると「アトピー性皮膚炎」、目に出ると「モノモライ」になります。皮膚は肺臓や肝臓の働きが正常なとき、一定の状態を保つと考えられます。ですから、肺臓や肝臓の働きが悪くなると皮膚の状態が悪くなります。たとえば、お薬を飲みすぎて肝臓が負けると、「薬疹」という状態になります。薬の影響で「湿疹」ができやすくなります。ストレスをたくさん受けて呼吸が浅くなると肘に「湿疹」が出やすくなります。どこが悪いかで「湿疹」の位置は変わってきます。ストレスを受けることにより内臓の働きが低下し、結果的に「冷え」につながるということがお分かりいただけるでしょうか。
メニューへ

3.東洋医療・鍼灸治療をするとどうなるか

 今湿疹を例に取りお話したことは、西洋医学にはない考え方です。東洋医学では、どこにできた湿疹はどこの働きが悪いからできたのか、ということが全て学問的に体系づけられています。鍼灸治療をするとお子さんの場合は2−3回で症状が消えます。ただしステロイドを塗ると、塗った期間だけ治るのに時間がかかります。全身にステロイドを塗っている場合でも、特にステロイドの軟膏を伸ばす前にチョンとつける部位はいつも同じ場所のことが多く、そこを中心に多く摺りこまれるため湿疹が1番ひどくなりやすく、皮膚が硬くなって厚みが出やすいのです。
 またステロイド外用薬の副作用として、毛細血管が太くなる、毛が濃くなるなどがあります。例えば、半年間ステロイドを使用していた人に東洋医学的治療を行うと、おおよそ全体的に半年間できれいになりますが、よく塗っている部位だけは数年なかなか消えないことが多いようです。ただし、生活改善をするとともに鍼灸治療をすれば治らなかって例は今の時点でありません。また大人の湿疹の場合でも衰えた内臓を回復するように鍼灸治療を行い局所を管理するとすぐよくなります。

メニューへ

4.生まれてまもなく症状がでるお子さん・乳児の場合

 今までの話は不摂生な生活により後天的に症状が出てきた場合についてです。
 今度は、生まれてきてまもなく症状が出るお子さん・乳児についてのお話をします。

 個人的には、生後すぐに症状が出てくるお子さんは、遺伝的要素が強いと考えています。生まれた直後から1ヶ月頃までの事を指します。この場合は、母乳を与えている母親を含めた治療が必要となります。退院後からお子さんの治療は可能ですから、不安に思ったら、ただちに治療を開始することをお勧めします。治療期間は、意外にかかります。また、生活の節制に根気が要ります。薬を使用すると人生の大半が「アトピー性皮膚炎」との戦いになる要素を含んでいますので、迅速かつ適切な対応が必要なお子さんであると認識すべきです。

メニューへ

5.「アトピー性皮膚炎」のお子さんをお持ちのお母さんはここを是非お読みください。

 ただ、今までの経験からすると、そのようなお子さんはあまり見受けません。「湿疹」が出始めて、「アトピー性皮膚炎」と診断されるには少なくても3〜4ヶ月経過していることが多いように思います。この場合は、遺伝的というより、生後の日常生活に何か問題があったと考えるほうが妥当だと考えています。いわゆる、後天的・人為的病気です。
 母乳で育った場合は、半年間、母子免疫があるので、風邪を引くようなことはあってもまず病気にはなりません。半年以内にお子さんが湿疹状態になるときは、母親の日常生活に問題があり、その結果、お子さんに被害が及んでいることが圧倒的に多いという印象を私は持っています。遺伝というよりもむしろ母体が冷えているために症状が出ることが多いからです。
 母親に問題があると思われる日常生活を例にあげると、妊娠後期腹帯をせず逆子になるほど冷やした、スカートで生活し太ももを冷やした、常時薄着をした、冷たいものを飲食する生活をしているために陣痛が起きにくくなっていた、などのケースが考えられます。(「お母さんのための子育て学」のコーナー参照) お母さんの体が冷えていると胎児の成長が悪くなります。また、母体が冷えていると、母乳はぬるくなります。そのため、ぬるい母乳をお子さんが飲むことになるので、赤ん坊は食事のたびに体が温まりません。結果的に冷えやすくなり、アトピー様の皮膚になりやすくなります。
 体温は、大人で36.2から3℃、お子さんで37.2から3℃です。体内の温度は1度くらい高くなっています。母親の体温が36.2度から36.3度ぐらいの場合、体内は37.2度から37.3度ぐらいでちょうどお子さんと体温が同じぐらいになります。おっぱいもちょうど良い温度です。母親の体温が36.5度を超えていると、なおいいです。
 お母さんの体温が低い場合、お子さんはいつも低い温度のスープを飲まされているようなものです。体が冷えるとお子さんは便秘をします。面白いことにアトピーのお子さんはみんな便秘しています。親は、お子さんの便通がどれぐらいの間隔であればよいか分からない人が多いようです。便秘ぎみの親は、2〜3日にいっぺんの便通でも良いと思っている場合すらあります。生まれた直後の赤ん坊は、3時間おきぐらいに1回、1日に7回から8回授乳します。ウンチは食事の回数と同じく7回から8回あります。これが正常な回数です。
 便秘をしている身体には毒素が溜まってきますから、吹き出物が出てきます。生後4ヶ月くらいすると症状が出てきます。皮膚科や小児科に行くとこれは「湿疹」です、「アトピーの気(け)があります」と言われる頃です。「ステロイドがいいですから使ってみましょう」と言われて、使ってみるとすぐにきれいになります。けれど、3週間ほど経つと、どっと強い湿疹が出てきます。次は強いステロイドの使用が始まり、アトピー性皮膚炎との闘いが始まります。
 「アトピー性皮膚炎」と診断された直後のお子さんは、病歴が短ければ短いほど「病」の程度が浅いので、治療に回数を要しません。早いと2〜3回で治癒し、その後生活を注意していただけば、再発することもありません。1日も早く鍼灸治療をし、気づいていない日常生活の不摂生を正常に戻すことです。これまでお話した知識があれば、アトピー性皮膚炎は地上から消え去るはずです。

メニューへ

質問タイム


Q
 私、体温低いんですが、やはり冷えているのでしょうか?
A. 「冷えている」のと「冷えがある」のは少しちょっとニュアンスが違います。「冷やしている」のと「冷えている」のもまた少しニュアンスが違います。「冷え」がある、と言うのが一番正しい言葉です。体温が低いと言うことは冷えがあるとはお答えできますが、どうして冷えがあるかと言うことは生活スタイルを伺ってみないとお答えできません。今までお話した内容の中で自分の生活に思い当たる節があれば、改善してください。

Q アトピーにおいて体質の遺伝は関係ありますか?
A .体質の遺伝という考え方もあると思いますが、私達は生活の習慣が一番の問題と考えます。親と同じような生活習慣、食習慣行っていることが多いようです。例えば、糖尿病の親の子供は糖尿病となったりします。心筋梗塞も同様なことがいえます。生活習慣は結婚をしたりして変わることがありますので、症状もそれにより変化したりすることがあります。

Q アトピーの子供たちがあるとき喘息になったりすることはありますか?
A .アトピーと喘息は裏表の関係です。アトピー性皮膚炎は、呼吸器系と関係がある話をしましたが、呼吸器系が調子悪くなると湿疹が出やすくなります。アトピーのお子さんには喘息が圧倒的に多く見られます。そういったお子さんは幹線道路沿いに住んではいけません。緑の多いところが良いでしょう。幹線道路沿いは炭酸ガスが多いので、体がだるくなり、力が入らない人間になります。幹線道路沿いに住んでいる人は、アレルギー症状を持っている人が多いようです。アレルギーの出方が違うだけなのです。

Q がんに遺伝は関係しますか?また、がんを発見する方法や治療方法は東洋医学にはありますか?
A
. 人間の体はいつでも細胞分裂をしています。その中には正常な分裂だけではなく、少しミスマッチな細胞が作られています。その間違った細胞を体の中で壊すところがあり、うまくコントロールしているのです。しかし、体の状態が悪くなると間違った細胞が多く造られ、壊しきれなくなります。その集団となったものが「がん」なのです。遺伝の要素よりも生活の要素が高いのです。誰でもがんになる可能性はあります。がんを東洋医学的に早く発見することはできません。がんは血液検査をしたり、画像検査をしたりしないとわかりません。問診をしたときに症状で推測することはできます。また鍼治療をすると「がん患者」だと経験上判断できます。ただし、早期発見やがんになりそうかどうかを判断することはかなり困難です。
鍼灸治療でがんを治すことは可能です。どこまで治せるかというのは、がんの種類や進行度によりますが、がんの細胞を退治することは可能です。がんが出来てから死に到るまでの期間を5段階に分けると、5段階目は死に到るのを待つだけで治療は非常に困難です。4段階目だと生きようとする気持ちに左右されます。3段階目までは可能であると考えます。


メニューへ





since2000.4.01