『日本醫史學雜誌』第60巻 第2号189頁通巻第1554号 平成26年6月20日発行
 第115回日本医史学会発表掲載論文 学術大会平成26年5月31日・6月1日

「医業類似行為について」


清野充典
順天堂大学医学部医史学研究室


【はじめに】

我が国では、明治七年八月十八日に医制が発布され、「医業」に従事する者が初めて法の下で管理されることになった。平成二十四年度現在、医業を行いかつ開業権を持つ国家資格者は、医師・歯科医師・はり師・きゅう師・柔道整復師・あん摩マッサージ指圧師である。この間、「届出医業類似行為業者」という登録制度があった。平成二年に、「届出医業類似行為業者」にもあん摩マッサージ指圧師の免許証を交付したことにより、戦前より続いた「届出医業類似行為業者」は制度上消滅した。「届出医業類似行為業者」が行っていた「医業類似行為」について述べる。


【本文】
「医業類似行為」を、昭和二十三年六月に厚生省医務局長らは「医業類似行為とは、医師、歯科医師、あん摩師、はり師、きゅう師または柔道整復師等他の法令で正式にその資格を認められた者が、その業務としてする行為でないもの」と定義している。 昭和三十九年三月に、厚生省医務局医事課は、「医業類似行為は、大別して人体に効果があると思われる手技療法、電気療法、光線療法、刺戟療法、温熱療法の5つの行為を指す」と言っている。登録制度があった昭和二十三年一月一日から昭和三十九年迄の間に登録した「届出医業類似行為業者」数は、14,700人であった。厚生省医務局長らは昭和二十三年六月に「医業類似行為の中でも疾病治療を目的としかつその可能性のある行為は医の行為であってこれを業とすることは医業となるもので、医業類似行為ないしは療術行為と称されているものの中には、実質的に医業に属するものが相当数あり、これらの行為は免許を受けた医師でなければ業としえない性質のものである」と、合わせて述べている。医業類似行為にあっても、医療を業とする国家資格者以外の者が行うことを禁じていることが解る。「医業類似行為業者」を、登録制とした理由を理解することができる見解と言える。厚生省は、「届出医業類似行為業者」に対しあん摩師資格取得を推奨した。あん摩師に転換した者は2,500名有り、死亡・廃業した者は3,600名であった。残りの8,600名は、323種類にわたる医業類似行為を行っていた。内訳は、手技療法が5,500名でそのうち指圧療法が4,000名、電気療法が1,700名、光線療法が200名、温熱療法300名、刺戟療法600名、その他300名である。


【結語】
 昭和二十三年一月一日に開始した「届出医業類似行為業者」登録制度は、昭和三十九年に終了し、平成二年に東洋療法試験財団が設立されたことにより、「届出医業類似行為業者」は消失した。現在、医業類似行為は、医師、歯科医師、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師または柔道整復師の法令で正式にその資格を認められた者以外行うことは禁じられている。「医業類似行為業者」及び「医業類似行為」については未だ国民、医業従事者及び地方公共団体の解釈において、乖離がある。「医業類似行為」を行う無資格者により、被害を被っている国民が多数いることを内閣府NPO法人日本消費者センターが報告している。「医業類似行為」は、現在の日本において存在しない行為であることを結びとしたい。


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