鍼灸医学とは何か
2014年世界鍼灸学会連合会 鍼灸統合医療会議 ヒューストン大会

日本国 東京・清野鍼灸整骨院院長
明治国際医療大学客員教授
順天堂大学医学部医史学研究室 
清野充典


【はじめに】
 鍼灸治療は、2000年以上の歴史を有する。
中国地方で発祥した伝統医療は、世界各国に広がりを見せている。
WHOは、2007年に伝統医学、中医学、東洋医学、漢方医学、韓医学等の定義を規定したが、
医学という用語には言及しておらず、伝統の意味や伝統医療を行っている国や地域を説明したに過ぎない。
鍼灸医学に対する定義も行われていない。鍼灸医学とは何かを検討したい。


【本論】
 中国では、清代まで鍼灸治療を「医」と呼称していた。
「医学」という言葉が初めて用いられたのは、1895年に清の唐宗海が書いた『中国医学入門』が初出である。
それまで、医療という言葉も用いられていない。鍼灸治療は、伝統医術として継承されてきたが、
伝承する方法として「陰陽論」や「五行論」という恣意的な理論を展開して来たに過ぎないため、
清代まで行われていた分析方法は「医学」とは言いがたい。
現在、医学の中心となっている分析方法は、近代医学に基づいている。
鍼灸治療を行うことにより生じる身体現象を、近代医学の方法論に基づいて分析・検討した結果の
集積した学問を、鍼灸医学と位置づけるべきであると考える。


【考察】
 アジア地域に伝承されている鍼灸治療、湯液治療、按摩治療、ヨーガ療法等の伝統医療は、
「こころ」が「からだ」を支配しているという思想背景がある。
「こころの病が生じた後にからだの病が生じる」という考えの基に、
からだのアンバランスを調整することを目的とした治療法が、伝統医療である。


【結語】
 鍼灸治療は、「こころ」と「からだ」のバランスを調整することを目的とした医療である。
鍼灸医学とは、「鍼灸治療という経験医療を、近代医学や現代医学の分析方法で
科学的裏づけを行う学問である」と考える。


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