メニューに戻る
この世に生命を誕生させる為の重要なお手伝いをする仕事「助産婦」安全に出産するための高い技術を持った、この職業に関する記事を紹介します。
認める?認めない? 【男性“助産婦”】 
                  2000.5.9(火)新聞より引用

 「助産婦」の国家資格を男性にも開放しようという、議員立法の準備が急ピッチで進められている。「男女共同参画の時代に、性と生殖を扱う現場にも両性がかかわるべきだ」と容認する声がある一方、「産む側が、男女どちらに助産を頼むか選べない以上、問題が大きい」との懸念も強く、助産婦の意見も分かれている。いきなり政治の場に持ち込まれた「お産」。専門家だけでなく、もっと一般 の人々を含めた議論が必要なようだ。

 男性「助産婦」を認めようという動きは、過去にも何度かあった。だが、助産婦の職能団体、社団法人日本助産婦会(七千人)などの反対もあり、見送られてきた。今年三月、同会が、方針を転換したことで保健婦助産婦看護婦法改正の動きが本格化した。

 同会の石塚和子会長は、ストーカーなど性をめぐる若者の事件が相次いだことで、性の問題を伝える男性が必要と感じるようになったことや、助産婦を志願する男子学生もいることを背景に挙げる。

 「妊産婦の人権を保障するため、男女どちらに助産を頼むか、選択の自由を確保できるよう付帯決議の設定を含めて要求していく」と強調する。
  しかし、産む側は「選択の自由」を手に出来るのか。

 助産婦らで作る、「お産&子育てを支える会」(世話人代表、朝比奈順子さん)は、八日、東京都千代田区の弁護士会館で反対集会を開いた。
  「病院では、出産する女性が男性『助産婦』を拒否できない」「同性に囲まれて、ゆったりとした気分で産みたい。出産の場に、子供の父親以外の男性にいてほしくない」などの声が出た。集会後、約五千人の署名を添え、導入に反対する請願書を国会に提出した。

 全国に焼く二万四千人いる助産婦のうち、八割以上は病院などに勤務しており、助産所を開業しているのは一割に満たない。地域によっては助産所がなかったり、少なかったりもする。助産所なら妊産婦の意志で選べるが、病院ではそうもいかない。医療機関で「男性助産婦はイヤ」と言ったとき希望が通 るのか。

 「支える会」のメンバーで、京都市内の病院に勤める助産婦の岡崎基子さんは、限られた人数でやりくりしている現状を考えると、妊産婦の希望をすのは難しい、という。さらに「産婦人科医は妊産婦と『点』で関わるけれど、助産婦はずっと付き添い『線』でつき合う。乳房や腰をマッサージしながら出産を待つのは、妊産婦の羞恥心や性的プライバシーの点からも女性がすべきだと思う」と主張する。

 東京都国分寺市で助産院を営む矢島床子さんは二年前、同様の法改正の動きがあった際、三週間で二万七千人の反対署名を集めた。「かつて反対署名をした人に説明せずに、助産婦会が男性導入のゴーサインを出したのは納得できない。これは、出産に関わる全女性の問題。助産婦などの専門職や政治家だけで決めるのではなく、広く国民的に議論する必要があると思います」とはなした。

 助産婦……保健婦助産婦看護婦法は、「厚生大臣の免許を受けて、助産又は妊婦、じょく婦もしくは新生児の保健指導をなすことを業とする女子」としている。具体的には妊娠の診断、出産介助、新生児の育児指導などを行う。一九五一年には七万七千人いたが、九八年末には二万四千人。男性の国家試験受験資格は、看護婦が四八年から、保健婦は九三年の法改正で認められたが、助産婦については認められていない。
  今回の法改正案は、女性は「婦」、男性は「士」と区別していた呼称を「師」に統一し、看護士、保健師、助産師とする点も盛り込んでいる。
メニューに戻る