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介護保険導入後 予想上回る老人医療費
                  2000.12.6(水)朝日新聞より引用

借入枠を5400億円拡大
社会保険診療 報酬支払基金健保、負担増も

 70歳以上の老人医療費が当初の見込みより大幅に増え、医療機関に支払えなくなる恐れがある---企業の健康保険組合などから拠出金を集めて医療機関に支払っている社会保険診療報酬支払基金(厚生省主管の特殊法人)がそんな危機感を強め、銀行からの借入枠を5400億円増やしていたことが、わかった。
 今年度は4月の介護保険の導入に伴い、これまで医療保険で賄われてきた高齢者の長期入院費などの一部が介護保険から支払われるようになった。ところが、介護保険の利用控えもあって、医療保険から支払われる老人医療費が思うように減らなかったことなどから、見込みを上回る分を借り入れざるを得なくなった。借入金を2年後に請求される健保組合などは、その時期に積立金が底をつくところもあり、極めて厳しい財政運営を強いられそうだ。

 厚生省の見込みでは、今年度の老人医療費は老人病院の長期入院費の他、老人保健施設や訪問看護などの支払が介護保険に切り替わるとして、前年度比11.8%減の10兆1000億円を予算に組んでいた。健保組合や中小企業の政府管掌健康保険、自営業者らの国民健康保険などの保険者から集める拠出金も、前年度より4600億円少ない6兆5000億円を割り当てた。
 ところが、4〜8月の実績は約5%減。関係者によると、支払基金の内部資料では、老健施設など制度として介護保険に移った部分を除く老人医療費は4〜8月で前年同期より、逆に13.8%増えている。このため、支払基金は11月末に理事会を開き、借入枠の引き上げを決めた。
 各保険者に割り当てた拠出金は年度途中で変えられないため、医療費が予想より伸びた場合に備え、年度始めに銀行からの借入枠を設定する。今年度は8100億円(昨年度分の借入金3590億円を含む)で、異例の増額分を合わせると、過去最高の1兆3500億円になる。

 支払基金は「8月までの実績に基づけば年度末までに最悪で4400億円不足する計算になり、その2割り増しで借入枠を増やした。しかし今後、医療保険から介護保険への切り替えが順調に進むと期待しているので、借入金はそんな大きな額にならないはずだ」(老人保健部)と説明する。
 しかし、医療保険か介護保険のどちらを適用するかを医療機関が選べる長期入院用ベット(療養型病床群)のうち、介護保険に切り替えたベッド数は当初計画の6割の11万7000床にとどまる。
保険関係者は「本人が一割負担する介護保険よりも、医療保険のほうが安く済むと考える人が多い。医療機関側は患者が減るのを恐れ、介護保険への切り替えに慎重になっている」とみている。

 今年度分の借入金は2002年度に精算額として、各保険者から徴収される。借入金が膨らめば、財政難の健保組合などは保険料率を上げざるを得ない。この年には解散の危機に直面 する健保組合が全体の2割に達すると予測され、健康保険組合連合会の下村健副会長は「借入枠とはいえ驚くべき額だ。実際の借入金の規模次第では、多くの健保組合が解散に追い込まれかねない」と危ぶむ。

老人医療費の支払い
 社会保険診療報酬支払基金は厚生省が年度当初に概算で決めた額の拠出金(老人保健拠出金)を健保組合などの保険者から集め、70歳以上の老人医療費の7割(患者負担分を除く)にあたる交付金として市町村に出す。市町村は3割分の公費(国3分の2、地方自治体3分の1)を加え、医療機関に払う。支払基金は概算の拠出金で足りない場合、銀行から借り入れ、2年後に精算額として、その年の拠出金に上乗せして保険者に請求する。

【コメント】
 年末になり、来年度の予算編成が行われていますが、世紀末にとうとう保険制度の崩壊を決定づける様なできごとが判明しました。
 介護保険の導入が医療費の抑制につながらなかったという事実は平成13年1月1日から施工される1割負担の導入も根本から考え直しなさいということです。
 政府の将来を見通した妥協のないビジョンを指さない場合の制度の消滅は確実なものとなりました。

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