メニューに戻る
脳こうそく・肝硬変…
   撃退に強い味方【細胞再生薬臨床応用へ】

                  2001.1.7(日)朝日新聞より引用

遺伝子治療承認見通 し

 細胞や臓器の再生物質として注目される肝細胞増殖因子(HGF)を使った治療が、今春にも始まる。
臨床応用の第一号として、足の血管が詰まる閉そく性動脈硬化症の遺伝子治療が、国の審査で承認される見通 しとなったためだ。動物実験では、今は有効な治療法がない重症の肝臓、腎臓、心臓、血管、神経の病気まで治すことがわかっている。心筋こうそくや肝硬変の遺伝子治療も計画されているほか、注射薬の開発も進む。日本で発見・開発中の物質が、21世紀の医療を一変させると期待されている。

 肝臓は7割切除されても元に戻る。HGFは肝臓の再生物質として、1984年、中村敏一・大阪大学大学院バイオメディカル教育研究センター教授(腫よう生化学)らが発見した。その後の研究で、肝臓に限らず、ほとんどの臓器細胞が壊死するのを防ぎ、修復・再生させることがわかってきた。

 動物に病気を作ってHGFを注射すると、急性肝炎や急性腎炎、急性心筋こうそく、脳こうそくなどでひん死の細胞が生き返るなどの劇的な変化が起きた。筋ジストロフィー症や筋萎縮性側索硬化症、パーキンソン病などの難病も、進行が止まったり、症状が改善したりした。動物実験では、がん以外のほとんどの病気に有効だ。

 人にも有効となれば、慢性腎不全の透析がいらなくなったり、肝硬変や肝がんで年に4万人亡くなるのも減らせる。肝臓や腎臓移植の必要な患者が激減するなど、医療全体が根本的に変わる可能性も高い。

 臨床応用の第1号となる閉そく性動脈硬化症は、糖尿病から来て最後は足の切断に進む。患者は日本だけで約10万人。大阪大学大学院の森下竜一・助教授(加齢医学・遺伝子治療学)らは99年11月、人間のHGF遺伝子を足の血管周囲の筋肉4カ所に注射、新しい血管を作って治す遺伝子治療を申請した。HGF遺伝子の臨床応用は世界初とあって国の審査が長引いていた。

 HGFに似た血管内皮細胞増殖因子VEGFでは、米国クフツ大学のイズナー教授らが94年から、約300人の患者の足に遺伝子を注射し、7割の患者は切断を免れたと報告している。HGFは、VEGFより丈夫な血管を大量 に作れ、「VEGF以上の効果は確実」と森下さんはいう。米国では心筋こうそく患者のVEGF遺伝子治療も始まっている。

 HGF遺伝子治療は、大阪大の別グループが心筋こうそく患者で、兵庫医大グループが肝硬変患者で計画中。一方、HGFの注射薬も国内で動物実験の最終段階だ。頭文字から「ハピー・グロース・ファクター」(幸福増殖因子)とよぼうとの提案もある。

 中村さんは「HGFは欧米でも急速に関心が高まってきた。治療を待つ患者のため。国は1日も早く認めてほしい」と話している。

動物実験でHGFが有効とわかった主な病気

肝臓病
腎臓病
肺疾患
消化器病
心臓血管病
筋疾患
脳神経病

劇症肝炎、肝炎、肝硬変、肝臓移植
腎不全、腎臓移植
急性肺炎、肺線維症
胃かいよう、糖尿病(すい臓細胞再生)
心筋こうそく、心筋症、閉そく性動脈硬化症、飛状動脈再狭さく予防
筋ジストロフィー症
脳こうそく、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症

【コメント】
 閉塞性動脈硬化症は、フォンテーヌ分類1〜4度のうち、1度、2度は鍼灸治療が有効と考えられます。3度、4度は外科手術を現在行っていますが、経皮的血管形成術・バイパス術・血管の移植・交感神経切除術が通 常とられる術式です。
21世紀は、上記記事にみられる方法が主流となる可能性が高いと思われます。病気になったら西洋医学(外科手術・西洋薬)東洋医学(鍼灸治療・湯液(漢方薬))のどれを選択したらよいのか医療をする側がはっきり提示する必要がありますが、患者サイドも、選択する知識を持ち合わせる能力が要求されます。今世紀初頭には、その医療形態がはっきりしてくるものと考えています。

メニューに戻る