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遺伝子治療承認見通 し 細胞や臓器の再生物質として注目される肝細胞増殖因子(HGF)を使った治療が、今春にも始まる。 肝臓は7割切除されても元に戻る。HGFは肝臓の再生物質として、1984年、中村敏一・大阪大学大学院バイオメディカル教育研究センター教授(腫よう生化学)らが発見した。その後の研究で、肝臓に限らず、ほとんどの臓器細胞が壊死するのを防ぎ、修復・再生させることがわかってきた。 動物に病気を作ってHGFを注射すると、急性肝炎や急性腎炎、急性心筋こうそく、脳こうそくなどでひん死の細胞が生き返るなどの劇的な変化が起きた。筋ジストロフィー症や筋萎縮性側索硬化症、パーキンソン病などの難病も、進行が止まったり、症状が改善したりした。動物実験では、がん以外のほとんどの病気に有効だ。 人にも有効となれば、慢性腎不全の透析がいらなくなったり、肝硬変や肝がんで年に4万人亡くなるのも減らせる。肝臓や腎臓移植の必要な患者が激減するなど、医療全体が根本的に変わる可能性も高い。 臨床応用の第1号となる閉そく性動脈硬化症は、糖尿病から来て最後は足の切断に進む。患者は日本だけで約10万人。大阪大学大学院の森下竜一・助教授(加齢医学・遺伝子治療学)らは99年11月、人間のHGF遺伝子を足の血管周囲の筋肉4カ所に注射、新しい血管を作って治す遺伝子治療を申請した。HGF遺伝子の臨床応用は世界初とあって国の審査が長引いていた。 HGFに似た血管内皮細胞増殖因子VEGFでは、米国クフツ大学のイズナー教授らが94年から、約300人の患者の足に遺伝子を注射し、7割の患者は切断を免れたと報告している。HGFは、VEGFより丈夫な血管を大量 に作れ、「VEGF以上の効果は確実」と森下さんはいう。米国では心筋こうそく患者のVEGF遺伝子治療も始まっている。 HGF遺伝子治療は、大阪大の別グループが心筋こうそく患者で、兵庫医大グループが肝硬変患者で計画中。一方、HGFの注射薬も国内で動物実験の最終段階だ。頭文字から「ハピー・グロース・ファクター」(幸福増殖因子)とよぼうとの提案もある。 中村さんは「HGFは欧米でも急速に関心が高まってきた。治療を待つ患者のため。国は1日も早く認めてほしい」と話している。
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