「かぜ」について(下)
清野鍼灸整骨院 府中センター 院長 日吉 直之 |
前号は「内因によってつくられた体のゆがみは内臓を疲労させ、中でも腎・肺機能低下、心機能亢進されるとかぜになります。」という、内臓の機能が弱るとかぜにかかるという文で終えました。
今号はさらに詳しくその機序について説明します。
寒い時期は、冷たい空気がからだの外部にまとわりつき、皮膚の表面から冷えます。このとき肺の働きは、皮膚等の表面を引き締めて、冷気がからだの中に入らないように働きます。また、腎の働きは体液をコントロールすることによってからだの内を縮め、外からの冷気の進入を防ぎます。これら二つの働きが弱り、からだの内と外の守りがなくなると、冷えを皮膚の表面からからだの内部に引き込み、かぜの初期状態となります。このとき十分に体力があれば、咳やくしゃみ、身震い等をすることで皮膚の表面に冷えをとどめ、冷えが体内に浸入するのを止めることができます。くしゃみは、からだを温めるだけでなく冷えを体の外に放出させて、かぜ症状を軽くする作用もあります。また心の働きが盛んになることによって体温を上げ、冷えがからだの深部に侵入することを防ぎます。これが発熱の症状です。腎や肺の働きだけで冷えを防げないときは、肝の働きを用います。肝の働きが高まることによって発熱し、心の働きが血管を収縮させ、発熱する力を上げます。悪寒を感じると、肝や心の働きが一生懸命働き、熱を作ります。
しかし、内臓の疲労が強く、冷えの浸入を防ぐことができないと、皮膚の表面だけでなくからだの内部まで冷えてしまい、他の臓器まで冷えの影響を及ぼします。その結果、病は重くなり症状が複雑になってしまいます。インフルエンザ等のウィルス性のかぜも同様で、内臓の疲労が強いと体外からウィルスの浸入を防ぐことができず、排除するために高熱が出ます。熱を作る体力がないと、症状は悪化します。
咳・くしゃみ・発熱等はかぜを改善するためにおこる現象で、これらを薬でとめる行為は、体を治そうとする働きを妨げ、かぜを長引かせる原因となります。
かぜを治すには、しっかりと休養し内臓の疲れをとり、冷えやウィルスを排除できる体力をつけることが肝要です。
鍼や灸は、内臓の疲労をとり、からだを温める効果があります。
早くかぜを治したい方は、薬を飲む前に是非ご相談下さい。
参考文献 小林三剛.『東洋医学講座』第三巻.自然社.1980 |
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