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朝日新聞デジタルJIJICOコラム

ぎっくり腰の原因は?湿布や冷やすのは効果的?予防策について (2019-09-28 JIJICO掲載コラム1)

マイベストプロ‐JIJICOコラム集を作成します 清野考案の用語(新設語)を紹介します

■ ぎっくり腰ってなに?原因は?

ぎっくり腰は、正式には「急性腰痛症」といいます。ぎっくり腰を経験したことがない人も、「重いものを持ち上げようとしたら、ぎっくり腰になった」ということを耳にしたことがあると思います。

ぎっくり腰は、床に落ちたものを取ろうとして腰をかがめたとき、うがいをして口の中の水を出そうと前かがみになっとき、くしゃみをしたときなど、日常の何気ない動作で、突然発症します。

ぎっくり腰については、腰の中の動く部分(関節)や骨と骨をつなぐ軟骨(椎間板)に許容以上の力がかかり、捻挫をしたような状態になります。また、腰を支える筋肉やすじ(腱、靱帯)の損傷などが考えられます。このほか、筋肉疲労や内臓疲労などもぎっくり腰の原因になります。いずれの場合も、ぎっくり腰の原因を特定するのは難しいのが現状です。

腰や足に激しい痛みやしびれがある場合、椎間板ヘルニアや加齢による変形性腰椎症の疑いがありますので、注意が必要です。また、腰椎の骨折や骨腫瘍などの場合、緊急性の高い外科手術が必要です。それ以外にも、重度の病気が考えられます。

緊急性を要する場合は、外科手術の設備があり内科医などと連携が取れる施設を受診するのが望ましいと言えます。整形外科を受診し、重大な原因に対して迅速に対応することが大切です。

■ ぎっくり腰から慢性の腰痛へ、腰痛は精神的ストレスが原因?

通常、ぎっくり腰は数日~数週間で症状が落ち着いてきます。しかしながら、生活を改善しないと1~3カ月を要する場合があり、慢性化する例も少なくありません。そのため、初期の対応が大切です。

「腰」は、文字通り体の「要(かなめ)」です。人間は2本足で歩くようになったこと❶から、10人に8人は死ぬまでに腰痛を感じると言われています。❷

人間が「痛み」を感じるとは、脳が「痛みの信号」を認識するということです。一方、人間の脳は必要以上の痛みを感じない仕組みを持っています。簡単に言えば、必要以上の「痛みの信号」に対し、その信号を抑制する物質が脳から放出され、必要以上の痛みを抑えます。
この、脳や脊髄内で行われる、電気信号の伝達抑制や鎮痛物質による痛みの情報抑制は、「下降性疼痛抑制系」と呼ばれます。この体の鎮痛システムは、鍼灸治療による鎮痛効果の主な要因と考えられています。❸

精神的ストレスが加わるとこの仕組みがうまく働きません。腰痛を例にとると、わずかな痛みでも腰に強く感じる❹、慢性的に腰が痛いということになります。この現象は、腰痛の治療を考える場合、整形外科的なアプローチだけではなく、精神的要因へのアプローチが大切であることを示しています。

実際、現在「慢性腰痛症に伴う疼痛」の治療薬として使われている薬は、それまでは「うつ病・うつ状態」を対象とする薬として承認された薬剤です。
つまり、腰痛には「体」と「心」両面からのアプローチが大切なのです。そして、人間のさまざまな疾患に対し、「体」と「心」の両面からアプローチするという姿勢は、長い歴史を経て体系づけられてきた東洋医学の基本的な姿勢です。

■ ぎっくり腰になったら腰に負担がかからない楽な姿勢を

では、ぎっくり腰になったらどうすればよいでしょう。発症直後は、速やかに専門医に相談することが大切です。しかしながら、ぎっくり腰には激しい痛みがあり、立ち上がることができない場合もあります。

動くこともままならないときは、まず腰に負担がかからない楽な姿勢をとりましょう。おすすめの姿勢は、膝を軽く曲げて横向きに寝ることです。この姿勢が一番、腰に負担がかかりません。場合によっては、あおむけに寝て膝を軽く曲げ膝の下にクッションを入れる、低めの台に両足を乗せるなどの姿勢も良いかもしれません。これは人により、発症直後の症状により異なります。いずれにしても、「腰に負担がかからない楽な姿勢」をとってみましょう。

■ ぎっくり腰の3大NG行為は入浴とマッサージ、湿布で冷やすこと

ぎっくり腰になったときにやってはいけない3つのNG行為を紹介します。

1つ目は、入浴です。ぎっくり腰に対して、多くの人は体を温める行為を行っています。お風呂に入って体を温めることは、よい効果を及ぼす場合もありますが、ぎっくり腰にはさまざまな原因がありますので、専門家に診てもらう前は控えましょう。

特に腰が痛み始めた時、5分以上熱い湯船に入っていると、翌日痛みが増強して動けなくなる確率が極めて高くなります。

2つ目は、マッサージ(あん摩)です。マッサージは入浴と同じく日本人になじみがあり、痛みがある腰の部分をもむ人もいます。しかし、これもNG行為です。

痛みがある場所を揉むと、痛みは強くなります。ヒトは、痛い場所があると、つい手が伸びます。手を当てる(手当)と楽になるからです。痛い場所を撫でる、さする行為は、痛みを和らげる効果があります。揉むまたは押すと、その瞬間は神経の働きを遮断し血液の流れが悪くなりますので、痛みが和らぐもしくは消失します。しかしながら、多くの場合、その直後もしくはしばらく時間をおいてから痛みを元のように感じます。強く押すまたは揉んでいる時間が長いほど、その反動は強くなり、揉む前より痛みが増強します。

3つ目は、湿布です。冷湿布を貼る人は少なくありませんが、冷湿布もNGです。「痛みには冷湿布」と思うかもしれませんが、ぎっくり腰発症直後の冷湿布は禁物です。

冷湿布を貼ると一時的に血管が収縮して血行が遅くなります。炎症を起こしている時は炎症が治まりやすいので有効な治療法です。炎症とは、痛み、熱、発赤、腫脹が同時に伴っている時です。30分から1時間程度貼付していると炎症の消退に役立ちます。しかしながら、痛みだけの時は、違います。痛みがあるときは、体力が落ちている時です。同時に、元に戻りたいと体が欲している時です。冷湿布をすると、血行が不良になり、元に戻ろう、治ろうとする力を抑えてしまいます。そのため、湿布の効力が終わるときや湿布をはがしたとき、一気に痛みがある部分に血液が流れ込み、痛みをぶり返します。湿布を貼っている時間が長ければ長いほどその反動が大きくなり、我慢できない痛みへ移行する確率が高くなります。この事は、温湿布でも同様の現象が起きます。そのため、湿布を長期間貼り続けて、痛みを感じないようにしようという人が増えるわけです。負のスパイラルが回り続けます。

鎮痛剤の服用へと移行しやすいパターンです。

ぎっくり腰は、原因を見極め、それぞれに適した治療やケアを行う必要があります。専門家のもとを訪れる前の「入浴」「マッサージ」「湿布」の3つの行為は、腰の痛みを悪化させ、動けなくなる状態へ助長させる3大悪行為ですので、注意が必要です。

■ ぎっくり腰は安静にしていればいいの?

ぎっくり腰発症直後について、「腰に負担がかからない楽な姿勢」をとることや3大NG行為について話しましたが、数日たって立ち上がれないほどの痛みが治まったら、どうしていますでしょうか。

かつてよく言われていたことは、ぎっくり腰になったら「まず安静にすること」ことでした。現在は、腰に過度な負担をかけない範囲で体を動かすほうが良いと考えられています。安静第一で体を動かさないでいると、腰痛と関連が深い筋肉(腹筋や背筋)が衰えてしまうためです。

このことは、さまざまな研究で明らかにされています。安静第一にした人と普段どおりに動いた人を比較すると、安静第一にしていた人は、普段どおりに動いた人に比べて経過が悪くなるからです❺。長すぎる安静は回復を遅らせます。痛みが弱まってきたら、自宅の中を歩きできる範囲で少しずつ体を動かすようにしましょう。

なお、ぎっくり腰を起こすと多くの人がコルセットの着用を考えるかと思います。確かにコルセットには、腰の保温や保護、腰部を固定することで痛みを軽減するなどのメリットがあります。また、着用することでの安心感もあります。

しかしその一方、コルセットをすることで、体幹を支える腹筋・背筋が使われず筋力が低下するというデメリットもあります。これは腰痛の改善には好ましくはありません。痛みがひどい場合は着用し、痛みが軽減した場合は外すなど、状況に応じた使い方が望ましいでしょう。

■ 精神的ストレスは鍼によるケアもおすすめ

「鍼(はり)」と聞いて、みなさんはどのようなイメージを持つでしょう。「肩こりに効く」「東洋医学の治療法の一つ」、あるいは「鍼灸のケアを受けているトップアスリートも多いらしい」などでしょうか。いずれもそのとおりなのですが、最近では、西洋医学だけでは対処できない疾患に対して、鍼や灸をはじめとする東洋医学を取り入れた医療プロジェクトも進められています。

これは先に話した、ある疾患に対し「体」と「心」の両面からアプローチするという東洋医学の基本姿勢、また、ある疾患をその部位だけではなく体全体のバランスから捉えるという概念に、大きな期待が寄せられていることを示しています。事実、アメリカやヨーロッパでは、日本以上に東洋医学が医療現場で活用されています。

腰痛は精神的ストレスが関与するということを紹介しましたが、この精神的ストレスのケアに取り入れられるのが鍼です。体の疲れが原因でぎっくり腰になったときは、入浴をせず、睡眠や休養を十分取ることにより改善へ向かっていきます。

翌日も腰痛が消えないときは、精神的ストレスが強いことが原因と考えられます。鍼を施すことにより、精神状態を安定へと導いていく効果を期待できます。精神活動の不安定が引き起こした腰痛に対して鍼を行うと、発症した日であれば、1回の施術で痛みが治まる場合もあります。

■ 血液の循環を促しこわばりをとく灸

筋肉疲労や内臓疲労を伴う時には、灸が有効です。ぎっくり腰は、床に落ちたものを拾うなど、日常の何気ない動作から発症する場合があります。

その原因の一つに考えられるのが筋肉疲労です。筋肉疲労はハードなスポーツや運動だけではなく、普通の生活でも毎日起こっています。筋肉疲労が重なった状態の時は、ちょっとした負担が腰にかかることでキャパオーバーとなり、ぎっくり腰が発症すると考えられます。

また内臓疲労も、体の内部から腰の筋肉などに負担をかけるので腰痛の一因になります。灸を施すことにより血液の循環が良くなり、筋肉疲労や内臓疲労が癒やされ、筋肉や関節のこわばりをとくことができます。いずれも、2~3回の灸を施すことにより腰痛の軽減を目指すことができます。

■ ぎっくり腰の再発防止と腰痛予防

ぎっくり腰は、一度発症すると再発することが考えられます。ぎっくり腰発症後、約1/4の人が1年以内に再発するというデータもあります❻ので、再発防止に取り組むことは大切です。

日常生活では、腰に負担がかかる姿勢に注意が必要です。例えば、前かがみの姿勢などを意識的に避け、イスなどに座るときは正しい姿勢を心がけるようにすることが大切です。

正しい姿勢をとるためには、腹筋や背筋が重要になりますので、適度な運動も行うようにしましょう。

歩くことにより、腹筋や背筋を鍛えることができます。筋肉のこわばりを緩和するストレッチも再発予防に効果があります。適度な運動は、腰痛の大きな要因である精神的ストレスの解消にもつながります。

腰痛予防としてヨーガ(YOGA)もおすすめです。ヨーガ(YOGA)は、腹筋や背筋の強化、呼吸をすることによる精神的ストレス解消など、多くの面で腰痛予防の効果を期待できます。

[筆者コメント]
 このコラムは、一生のうち10人に9人は感じると言われている腰痛について書いています。JIJICO1本目のコラムです。腰痛を誰もが経験する割には、その対処法が最も理解されていないのではないかと思い、最初に書きました。朝日新聞編集部の協力を得て、腰痛のバイブルとも云える内容になりました。是非熟読して、腰痛を発症した時、役立てて戴きたいと思います。
 腰痛は、肉体的ストレスだけでなく、精神的ストレスでも生じていると考えられています。
 清野は、精神的ストレスに起因する症状は、認識力の働きに支障を来している病気だと考えます。外へ意識を向け過ぎ、精神活動の崩れを来すと、腰痛を発症します。こころの病に、鍼治療は有効です。こころの病で発症した腰痛に、鍼治療はもっとも最適な治療方法だと考えます。
 清野は、肉体的ストレスに起因する症状は、整体力の働きに支障を来している病気だと考えます。腰痛になると、鎮痛剤の服用、外用薬の使用、入浴などにより、肉体の疲労を助長させる人が多くみられます。からだの病に、灸治療が有効です。からだの病で発症した腰痛に、灸治療はもっとも最適な治療方法だと考えます。
 西洋医療が有効と思われない症状に、鍼灸治療が保険適用されます。腰痛症がその一つです。腰痛に鍼灸治療が適応であることは、厚生労働省が認めています。

[腰痛に対する鍼灸治療]
 急性期の腰痛は、自発痛を強く伴います。骨折などの外傷がなく、何気ない動作で発症した場合は、3大NG行為をせず、鎮痛薬を服薬しないですぐ鍼灸治療をすれば1回の治療で痛みが消失する可能性大です。清野の経験では、発症後24時間であれば1回の鍼灸治療、発症後48時間であれば2回の鍼灸治療、発症後72時間であれば3回の鍼灸治療で痛みは消失すると考えます。この回数で緩解しないときは、薬物を常時服用しているまたは疾患が潜んでいることが考えられます。初診時に、薬の服薬状況や現病歴・既往歴の問診を丁寧に行いましょう。
 急性期の鍼灸治療は、鍼術・灸術ともに繊細な技法が求められます。技量が伴わない場合は、2倍、3倍の治療回数を必要としますので、基本練習を毎日訓練する事が大切です。

【参考文献】
❶「人類の進化における直立二足歩行の光と影 ―整形外科医療の立場から」
https://amcor.asahikawa-med.ac.jp/modules/xoonips/download.php/f1201023.pdf?file_id=5729
❷労災疾病等医学研究普及サイト 
「職場における腰痛の発症要因の解明に係る研究・開発、普及 職場における腰痛の発症要因の解明に係る研究・開発、普及」 研究報告書
https://www.research.johas.go.jp/booklet/pdf/2nd/05.pdf
❸医歯薬出版株式会社 生理学第3版
❹反復寒冷ストレス負荷により誘起されるラット体性痛・内臓痛における下行性疼痛抑制系の機能解析および各種薬剤の薬効評価
https://cir.nii.ac.jp/crid/1910583860652406144
❺(旧版)腰痛診療ガイドライン2012 CQ 8. 腰痛の治療に安静は必要か
https://minds.jcqhc.or.jp/summary/c00178/
❻全国健康保険協会(協会けんぽ) 腰痛
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/~/media/Files/kochi/20140325001/youtsuu1.pdf

2025(令和7)年11月19日(水)に小学館から発売された『知らないうちに寿命を縮める危ない生活習慣24』(清野充典著・小学館)

の内容は、JIJICOに掲載された1~70本目のコラムを24に再編集した内容です。この本のために書いたコラムもあります。清野が提唱する「養正治療」の内容が満載です。ぜひご覧戴き、東洋医学に基づく養生法を実践戴きたく思います。

令和8年(2026年)2月13日(金)
 東京・調布 清野鍼灸整骨院
  院長 清野充典 記

清野鍼灸整骨院は 1946年(昭和21年)10月5日(土)に瘀血吸圧治療法を主体とした治療院「清野治療所」として創業しました 現在80年目です 清野鍼灸整骨院は「瘀血吸圧治療法」を専門に治療できる全国で数少ない医療機関です
※2026年2月2日(月)に東京・調布開設40年目を迎えました

[ 2026.02.13 ]