関節はたくさんありますので、手術をする頻度の高い肩の関節を例にとってお話を進めましょう。肩は上腕骨(腕の骨)と鎖骨と肩甲骨で構成されています。このうち、鎖骨と肩甲骨は靭帯によって強固に連結しています。この関節を肩鎖関節といいます。
肩鎖関節は肩から直接落下し地面に強く打ち付けると、靭帯が切れ鎖骨が上方に浮きます。局所を打ち付けたことにより、肩がボコッと腫れ上がった様に見えます。柔道やラグビーの練習中、交通事故の時などに良く見られる脱臼です。受傷直後より強い痛みが現れ、肩を動かす事が困難になります。当院に年間何人も訪れるめずらしくない外傷です。
徒手整復による治療(非観血的外科療法)では、浮き上がった鎖骨を押し込んで固定するだけで問題なく靱帯が修復されます。時間がたちすぎて筋肉などが鎖骨の下に入り込まない限り、整復自体は困難な手術ではありません。問題は靭帯が修復する期間(保存療法の期間)です。完全に切れた場合修復に約12週間を要します。つまり、約3ヶ月テープで鎖骨を固定し三角巾で腕をつらなければいけません。冬の寒い時期ですとあまり問題になりませんが、汗をかく時期になるとテープをしている部分が痒くて耐えられない人もでてきます。
観血療法の場合は約10週間で靭帯の修復が可能です。かゆみを伴わない利点はありますが、全身麻酔後の苦痛と手術の跡が残る点は避けられません。
どちらも医療をする側(医師・柔道整復師)の技量が伴っての期間ですが、観血療法の方がリスクは高く、優秀な外科医に執刀してもらえるかどうかも期間を大きく左右するものと思われます。
どちらを選択するかは患者さんの自由ですが、アメリカでは4:6で手術をしないほうが多いようです。ちなみに日本は6:4で手術をする人が多いようです。自己主張と権利意識の強いアメリカ人が手術前によーくインフォームドコンセプトを行うのに対し、医師の意見を尊重する傾向が強い日本人との差が数字に表れているようです。日本の整形外科医は手術を優先する傾向にあることもそれを後押ししているのではないかと考えます。
どちらを選択しても治療が長期間に及んでいるので、衰えた筋肉を回復するため、さらに数週間を要します。最初の時点で、手術法の違いによる差が生じてくるかどうか知りたいのではないかと思いますが、3~4ヶ月間におよぶ養生の仕方を多少差し引いても、大きな違いはないようです。つまり、どちらの治療法を選択してもあまり差はないということです。しいてあげれば、手術の跡が一生残ることぐらいでしょうか。
清野鍼灸整骨院では、固定を外した直後に日常生活が送れるように、治療を進めています。いわゆるリハビリテーションが必要ない診療を、毎回心がけています。早期回復をご希望の方は、是非お越し戴きたく思います。
「脱臼だとわかったらどうしたら良いのか 捻挫との見分け方は?」
「骨折・脱臼に鎮痛剤は必要ありません」
「脱臼でメスを入れる時と入れない時の治り方の違い」
「筋力の低下は脱臼を招きやすい 睡眠不足による集中力低下は関節をひっかけて脱臼を起こす確率が高くなります」
「脱臼をしたら最初にするべきことは関節の保護 不用意に引っ張ると骨折や靭帯断裂などの二次的被害を招きます」
「脱臼した関節の冷やしすぎは厳禁 4℃程度の水をタオルに染み込ませて患部に当てましょう」
「脱臼を確認後 6時間以内に徒手整復(非観血療法による外科手術)をすれば後遺症はほとんど残りません」
当院の治療をご希望の方は、「治療の流れ」をご覧頂きたく思います。
東京・調布 清野鍼灸整骨院
院長 清野充典 記
朝日新聞デジタル マイベストプローJIJICO掲載コラム
「骨が折れたなと思ったらすべき事は何か 冷やし過ぎは良くない?」
「脱臼した時に関節を自分で戻すのは危険 もし骨折を伴っていたらどうなる?」
「捻挫は放置しても治らない 有効な治療方法は?」
[ 2019.08.09 ]
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